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第3次AIブーム到来
AIとは「artificial intelligence」の略で、日本語では「人工知能」といいます。
AIの歴史の幕開けは、1950年にアラン・チューリングが提案し、ある機械が「人間的」かどうかを判定するためのテスト「チューリング・テスト」にあるといわれています。
ちなみに、このアラン・チューリングは、イギリスの数学者ですが、第二次世界大戦においてドイツの暗号機「エニグマ」を解読した人物としても有名です。
1956年には、ダートマス大学に在籍していたジョン・マッカーシーが主催し、1ヶ月にもわたってブレインストーミング中心の会議が開催されました。
この「ダートマス会議」にて、人工知能という学術研究分野が確立され、この会議の提案書では、人類史上初めて「artificial intelligence(人工知能)」という用語が使われました。
こうして幕開けしたAI研究ですが、その後は、ブームと衰退を繰り返していくようになります。
そして「Machine learning(機械学習)」の研究や「Deep learning(深層学習)」の登場や、膨大な計算量を誇れるコンピューターの進化によって、現在の「第3次AIブーム」が訪れました。
機械学習とは?
機械学習とは、読んで字のごとく「機械(コンピュータ)が学習する」ことです。
AIという技術の中でも、人が全てを指示して初めて動くルールベースとは異なり、人の代わりに物事の特徴を発見する手法です。
この手法は「分類」「認識」「予測」をするのに用いられています。
そして機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類されています。
「教師あり学習」
問題と答えを与えて、学習させる方法です。
事前に与えられたデータから、その「入力と出力の関係」を学習するアルゴリズムで、入力されるデータには、入力値とともに、あらかじめそのデータの正解が付与されています。
こうして大量のデータを人間が用意して、それをプログラムに与えることにより、プログラムは入力と出力の関係を学習していきます。
そして与えられた入出力データ間の関係が学習できれば、それを未知のデータにも適用して、出力の予想が可能となります。
この手法が得意なのは、リスクマネジメントをはじめ、何かしらの決定をするときなどに用いるランダムフォレストなどの「分類」や、「売り上げ」や「成長率」といった数量を扱うときの「回帰」です。
「教師なし学習」
問題だけを与えて、答えは与えずに学習させる方法です。
人間から正解となる出力データを与えられずに、入力データから、データの構造、特性、新たな知見を学習していくアルゴリズムです。
正解が与えられていないにも関わらず、そのデータから特徴を見つけ出すことが可能とする様々な手法を用いて、コンピュータが学習することができるようになっています。
この手法が得意なのは、よく似たデータの集まりを機能やカテゴリごとに分けて集める「分類」の延長である「クラスタリング」や、精度の足を引っ張るデータを減らす「次元削減」です。
「強化学習」
明確な正解がないときに、最適解を選択できるように学習させる方法です。
周囲の環境を観測することで、どう行動すべきかを学習します。
行動によって必ず環境に影響を及ぼし、環境から報酬という形でフィードバックを得ることで、学習アルゴリズムの精度をあげていきます。
こうして、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習します。
この手法は、通信システムの周波数帯の割りあてや、在庫管理、生産ライン最適化など、多くの分野で使用されています。
深層学習とは?
深層学習(ディープラーニング)とは、人間の脳神経系のニューロンを数理モデル化し、ニューラルネットワークの層を幾重にも重ね、三層以上の多段構造を用いた学習のことを指します。
ニューラルネットワークは「入力層」→「隠れ層」→「出力層」で情報の処理をするのですが、それでは単純な情報しか処理できないため、複雑な情報に対応するように”層”の数を増やしています。
ディープラーニングは、層を増やし、複雑さに対応したおかげで、分析精度が飛躍的にあがり「第3次AIブーム」の牽引役となりました。
ディープラーニングで出来ることは?
①画像認識
画像や動画などを入力し、文字や顔などの特徴を認識させ検出する技術です。
背景から特徴を分離抽出することで、マッチングや変換をおこない、目的となる特徴を特定し認識しています。
SNSでのタグ付けや、自動運転などに使われています。
②音声認識
人間の声などを認識し、テキストとして出力させたり、音声の特徴をとらえ、声を出している人間を識別させたりできます。
スマホなどの音声入力などに使われています。
③自然言語処理
人間が日常的に使用している言語(書き言葉や話し言葉)を、コンピューターが処理をして理解させる技術です。
機械翻訳やコールセンターでの応答などに使われています。
④レコメンデーション
顧客の好みを分析し、顧客それぞれの需要にあった情報を提供するサービスの事です。
Web広告の表示などに使われています。
ディープラーニングの問題点
①ブラックボックス問題
非常に膨大な量のデータを処理しているので、出力された結果を見ても、どのようなプロセスから導かれているのか、明確には誰にもわかりません。
このため、Hanson Robotics社が開発した女性型ロボット「Sophia」が「人類を滅亡させる」と答えたり、マイクロソフトの「Tay」がヘイトスピーチをしたりしました。
この問題に対しての両社の発表コメントは、推察に留まっています。
②雇用が減る
人間がおこなってきたことを、機械に代替えされることで起こるとされています。
この問題は、コンピューターだけにとどまらず、あらゆる技術の進歩とともに、たびたび発生している問題ですし、産業革命のときも問題視されました。
③リスクマネジメント問題
AIの管理に何らかのトラブルが発生した場合は、AIシステムと紐づけされている全ての工程や、セキュリティなどに影響が出る。
④シンギュラリティ(技術的特異点)問題
シンギュラリティとは、AIなどの技術が、人間より賢い知能を生み出す事が可能になる時点を指す言葉です。
レイ・カーツワイル博士は「2029年にAIが、人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点が来る」と提唱していて、この問題は「2045年問題」とよばれています。
「2045年問題」の根拠となっている理論が「技術進歩においてその性能が直線的ではなく、指数関数的に向上する」という法則である「収穫加速の法則」です。
これは、技術的な進歩が起こることで、その技術が次の進歩までの期間を短縮させますので、ますますイノベーションが加速する、という概念です。
2045年以降は、人間以上の知性をもった「AI」が登場し、人間では予測することが不可能な変化が起こるのではないかと問題視されています。
各国の「AI」軍事利用
アメリカ
米国防総省(ペンタゴン)は、2018年からの5年間で、約50億ドルをAI研究にあてることを発表しました。
AI業界を代表するような企業との提携も計画していましたが、そのうちいくつかは、グーグルをはじめ、IT企業からの反対によって取り消されています。
米国家安全保障会議(NSC)の発表では「いまや中国とロシアが、AIの軍事利用で米国のはるか先を行っており、この分野で米軍が遅れを取り続けるならば、致命的な結果を招く」と警告しています。
ロシア
ロシアは、AIの国家戦略プランにおいて、技術で世界のリーダー的存在となり、他国に依存しない独立性と、AI分野の競争力を強化していく重要性が強調しています。
プーチン大統領は「AIの分野でリーダーになれる者が、世界のリーダーになれる」と述べ、今後10年でAI技術の活用によって年間1.2%のGDP成長を目指すとしています。
2019年に、アラブ首長国連邦の首都アブダビで開催された「軍装備見本市」で、横幅1.22メートル、時速130キロのスピードで半時間は航行可能なうえ、重さ2.7キロの爆発物を運べるドローン「KUB-BLA(クブラ)」という、AIを搭載した兵器が発表され注目を集めました。
中国
中国の人民解放軍は、AIを軍事のあらゆる分野に利用し、確信を目指す「AI軍事革命」を掲げています。
2030年までに、中国をAIの分野で世界をリードする存在にする目標を立て、軍民融合によってその技術を軍事に応用しています。
中国は、AIを搭載したドローンはもちろんですが、ロボット兵士や無人船の開発にも力を入れています。
ということで、今回の記事はここまでです。
AIと聞くと、近未来の夢のある話だと思う反面、ターミネーターのような世界になったらどうするの?って思う面もあります。
シンギュラリティ以降の世界については、AI専門家や物理学者たちでも、大きく意見が分かれていますので、まったく不明だと言えます。
軍事転用に関しては、今でもそうなんですが、先進国の兵士はさらに死ななくなっていき、弱い国はボコボコにやられるという格差が広がっていくのでしょうね。
そして、(こちら側から見た)テロリストたちが、この技術を手にしたときに、おもいっきりやり返すといった図式になるのでしょか。