欧州連合(以下EU)は、経済のまとまりが中心だったヨーロッパ共同体(EC)に、加盟国同士の結びつきをさらに強固にさせるため、政治統合の要素も加えて、1993年に誕生しました。

まずは「EUのかんたん年表

このように加盟国が増えていくことで、共存共栄の精神・移動や通信の自由・軍事力の集結・単一市場による貿易・インフラ整備など、多くのメリットがあります。

しかし、ユーロを導入し、金融統合されている場合は、独自の金融政策が打てないといったデメリットが存在します。

現在、EU加盟国でユーロ通貨を導入しているのは、以下の19か国です。

アイルランド・イタリア・エストニア・オーストリア・オランダ・キプロス・ギリシャ・スペイン・スロバキア・スロベニア・ドイツ・フィンランド・フランス・ベルギー・ポルトガル・マルタ・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク

EUに加盟し条件が整うと、ユーロ通貨の導入が義務付けられています。(一部例外国があります)

ユーロ通貨導入のメリット

通貨統合することで、為替の取引コストがなくなり、EU加盟国内の価格の透明性が高まりました。

いろんなことの移動が自由

EU圏内では、人の移動は自由です。隣の国に通勤・通学してる人々もたくさんいます。
もし、通貨統合がされていなければ、いちいちその国の通貨に、両替しなければなりません。

ユーロ通貨導入により、より生産性の高い企業・産業・地域に資本と人材が流れて、全体として欧州経済が強くなります。これは、人・モノ・カネの流れがスムーズにおこなわれるようになるためです。

米ドルに悩まされない

ドルの影響が少なくなります。ユーロ通貨導入前、EU圏内の基軸通貨(相手国との取引に使用する通貨)は米ドルでした。米ドルは、アメリカの金融政策などの影響で変動(ユーロ圏がどうにもできないことで)します。これにより相手国との取引で、損得が発生してしまいます。

とくに、小国の通貨は信用度が低いため、為替の変動が激しくなってしまいますが、ユーロ通貨という安定通貨になることで、そういったリスクを避けることができます。

ユーロ通貨導入のデメリット

勝手に金融政策できません!

国として、独自の金融政策がとれなくなる。これが近年、といいますか、ユーロ通貨導入前からいわれていた最大の問題です。
記憶に新しいとこでは、ギリシャの財政破綻でしょうか。
単純にいいますと、自国の通貨の場合は、お金に困ると、勝手にお金を刷って増やすことも可能です。(もちろんこれをすると、為替で自国通貨の価値は下がりますが、応急処置としては有効です)
それに為替で、自国通貨の価値が下がると、貿易相手国からしたら安く購入できるので、輸出は活発になりますし、観光客の増加も見込めるようになります。
それが、数年前の財政破綻状態にあった、ギリシャでいうと、独自の金融政策が打てませんので、ユーロ通貨の価格を意図的に、操作することができません。つまり、取引相手国から見れば、貿易面でも観光面でもメリットがなく、ただの不景気な国になってしまいました。

経済的自由主義の拡大

企業間の競争が激しくなるので、価格競争がはじまり、企業の利益を減少させます。市場の範囲が広く、大きくなれば、ライバル企業もでてきますので仕方ないともいえます。しかし、企業の利益が下がれば、賃金は上がりませんし、税収も少なくなります。

高賃金国には、低賃金国から労働者が流入してきます。これにより、単純労働の場合はとくにですが、賃金が抑えられるようになります。そして、高賃金国の労働者は失業率が上がりますし、低賃金国は労働者の確保が難しくなります。

格差が拡大

競争原理に基づく、自由主義では、当然ながら格差は拡大していきます。

誰だってそうでしょうけど、賃金の良い企業で働きたいでしょうし、インフラが整ってたり、治安が良かったりする場所で、生活したいのではないでしょうか。

ひとり当たりのGDP (欧州連合日本政府代表部のデータ)

ユーロ通貨導入国では、最も低いのが、ラトビアでひとり当たりの名目GDPは、13900ユーロとなっています。これは最も高いルクセンブルク、92800ユーロの、約15%しかありません。

このデータで上位のほうの、デンマーク・スウェーデン・イギリス(2020年EU離脱)は、それぞれのお国の事情でユーロ通貨を導入してません。
下位のほうで導入してないのは、条件が整っていないため、導入させてもらえてません。

※ルクセンブルクが裕福なのは、ケイマン諸島みたいなことをユーロ圏でやってるためです。

強国からすると

メリット

EU・ユーロ導入国の強国というと、ドイツやフランスです。この2か国は、国力も強いですし、なんといっても初期からのメンバーであり、ブリュッセル(EU本部)への影響力も絶大です。

ユーロ圏内の取引の場合は、規制の撤廃ができて、為替のリスクを気にすることもなく、輸出市場を拡大していけます。
なぜなら、ユーロ通貨導入国が増えれば、増えるほどに、規制なく自由に取引できる市場が広がっていくからです。

ユーロ圏以外との取引の場合は、自国の国力ほどに、為替のレートが変動しませんので、輸出で大きく利益をあげれます。
通常であれば、国力が上がれば、自国通貨も相対的に上がっていきます。しかし、ユーロ圏の場合は、弱小国も共存してますので、為替の変動が抑えられています。

輸出で儲ける(外需)ということは、モノを渡して、かわりにお金を貰うということですので、国が潤うということに繋がっていきます。

デメリット

安い労働力が、ユーロ圏からどんどん入ってきますので、自国民の失業率が上がります。
とくに単純作業の場合は、最低賃金で文句を言わずに働く方を採用するためです。

失業率があがると、税収の低下や社会保障費の増加につながっていきますので、増税されます。

弱小国からすると

メリット

経済的に弱い国からすると、ユーロ高が維持されていますので、輸入はしやすくなります。

通常、経済的に弱い国は、インフレなどが起こりやすく、物価が安定しませんが、強国がユーロを支えてますので、その心配はありません。

自国の実力以上に、国債を発行できる。

デメリット

実力以上に発行してしまった、国債のせいで借金がかさむ。

膨らんだ借金に対して、有効な手段がとれない。

ユーロ圏内の格差問題はどうなるのか?

これから先、何十年も継続していけば、加盟国全体に富が分配されていくのかもしれませんが、現段階では、新たな搾取構造としか思えないです。

ルクセンブルクのような独自路線をいってる国は別として、東欧の国が、EU最大のメリットである単一市場を活かして、利益を上げていけるのかどうか・・・
だからといって、EUに加盟しなかったら、さらにどうなることやら・・・

アメリカの巨大な軍事力をバックにした「新自由主義」や、中国共産党が前面に出て推し進めてくる「一帯一路」に対抗していくには、今のEUでは弱いような気がします。

結論は、格差問題はなくならないでしょう。EUを仕切っている強国からすれば、あった方が何かと都合が良い面があるので仕方ないですね。
だったら、イギリスみたいに離脱すれば?と思うかもしれませんが、あれは大国イギリスだからできたのです。
もしも、弱小国が離脱なんてしたら、違約金やら何やらで、どんな嫌がらせが待ってるかわかりませんよ。

ひょっとしたら、このEUというのは、今の時代に合わせた、新しい形の植民地支配なのかもしれませんね。

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