IOCとは、International Olympic Committeeの略で、国際オリンピック委員会のことです。
本部は、スイスのローザンヌにあります(オリンピックハウスと呼ばれています)。
国際連合総会オブザーバー(国連総会への出席はできるが、投票権・発言権はない)資格を得ているため、国際機関の一つと思われがちですが、非政府組織 (NGO)の非営利団体 (NPO)です。
その運営資金は、主に放映権料販売とスポンサーシップ収入から得ています。
この記事の目次
IOC(国際オリンピック委員会)の組織
理事会
IOCの理事会は、会長1名・副会長4名・理事10名の計15名で構成されています。
任期はそれぞれ4年となっていて、IOC総会にて、選出選挙・再任選挙をおこなっています。
IOC総会
これは、IOCの全体会議で、IOCにおいて最高機関の役割をはたしています。
開催は、年に1回です。開催都市は毎年かわりますが、オリンピックイヤーには、開催地でおこなわれます。
また、IOC総会の開催地は、3年前におこなわれる理事会、または総会で決定することになっていて、投票によって決定しています。
定期的な年1回のIOC総会以外には、臨時総会というのがあり、これはIOC会長によって招集されるか、IOC委員の3分の1以上の、書面による要求で開催されます。
IOC委員
IOC委員は、毎年開催されるIOC総会のたびに、選出および再任されます。
IOC委員の定員は115人で、定年は70歳となっています。
定員115人のうち、国内オリンピック委員会(NOC)会長・選手委員・国際競技連盟会長が、それぞれ15人以下入ることが決められています。
NOC(国内オリンピック委員会)
NOCとは、IOCの管理の下で、オリンピック憲章に従い、それぞれの国や地域で「オリンピック・ムーブメント」の啓蒙や保護をすることを目的とした組織です。
IOCに承認されている、NOCの数は世界中で206あり、国連加盟国193ヵ国すべてにNOCがおかれています。
オリンピック・ムーブメント
オリンピック・ムーブメントとは「スポーツを通じて、友情、連帯、フェアプレーの精神をつちかい、相互に理解し合うことにより世界の人々が手をつなぎ、世界平和を目指す運動」です。
目的は「オリンピズムと、その諸価値に従い、スポーツを実践することを通じて若者を教育し、平和でよりよい世界の建設に貢献することである」というふうに、オリンピック憲章の第1章に規定されています。
4年に1度開催される競技オリンピックも、このオリンピック・ムーブメントに含まれています。
構成要素は「国際オリンピック委員会(IOC)」「国際競技連盟(IF)」「国内オリンピック委員会(NOC)」となっており、「オリンピック・ムーブメントにいかなる形で属する何人も、どの団体も、オリンピック憲章の条文に拘束され、かつIOCの決定に従わなければならない」とオリンピック憲章に規定されています。
これにより、IOCの絶対権力が保障されています。
オリンピック開催地の決定方法
開催地は、7年前のIOC総会で決定します。
例えば、東京2020オリンピックの場合は、2013年9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた「第125次IOC総会」で決定しました。
立候補申請
①オリンピック開催を希望する都市は、自国のNOCを通じて立候補を申請します。
②立候補申請した都市は、開催概要をまとめた「申請ファイル」をIOCに提出します。
③IOCの作業部会が、各立候補都市が提出した「申請ファイル」を項目ごとに点数で評価します。
④IOC理事会が1次選考をおこない、作業部会の評価をもとに、開催能力のある都市を絞り込み、正式な立候補都市を選びます。
開催地決定
①1次選考を通過した都市は「立候補都市」として、開催計画を詳細に記した「立候補ファイル」を IOC に提出します。
②IOCが評価委員会を組織して、各都市の現地視察をおこないます。
③評価委員会が現地視察の結果をもとに、各立候補都市の長所と課題を記した「評価報告書」を作成し、公表します。
④大会開催7年前に開かれるIOC総会にて、IOC委員による(匿名)投票がおこなわれて開催地が決定します。
立候補申請の段階では、開催能力が問われますので、IOCのやり方はうまく機能しています。
しかし、IOCの評価委員の現地視察では、過剰な接待があったり(おみやげがついたり)もするでしょうし、100人以上いるIOC委員の匿名投票では、各委員にたいしてロビー活動という名の裏金工作もあるでしょうし、何かと問題はありますね。
東京2020オリンピック招致活動では、当時のJOC会長だった竹田恒和氏が、招致活動における収賄の容疑で、フランス当局から捜査されていました。
そして、大阪が立候補した2008年大会の開催都市は、2001年のモスクワ総会で決まりました。
大阪招致委員会の参与を務めた早稲田大学の原田宗彦教授は、事前の票読みで「54票、いけまっせ」と予測する関係者さえいたと明かしています。
しかし、実際に1回目の投票で獲得したのはわずか6票で惨敗。当時の日本オリンピック委員会(JOC)の八木祐四郎会長(故人)は投票後、11人のIOC委員から「大阪に入れたよ」と声をかけられていました。匿名投票だから真相は分かりません。だけど間違いなく5人はウソをついたことになります(フェアにやるとこうなります)。
何年か前に、国際サッカー連盟(FIFA)も裏金問題で大きく報道されてましたね。
2010年ワールドカップ南アフリカ開催や、2011年の会長選挙などの賄賂で、合計1億5000万ドル(日本円で約185億円)を超える金が乱れ飛んでいたことが問題視されてました。
開催地決定をこの方式でおこなっている限りは、裏金がなくなるわけがないでしょう。っていうより、あって当たり前ですね。
IOCが本当に開催地選考投票の買収をなくしたいのなら(委員の誰もなくしたいなんて思ってないと思いますが)、正式立候補都市の選考だけきちっとして、あとはくじ引きにしたらいいのではないでしょうか。
オリンピックのスポンサー企業
東京2020オリンピックを例にしますと、基本的には3つのランクにわかれています。提供する額によってわけられていて、権利も違います。
ワールドワイドオリンピックパートナー
TOP(The Olympic Partner)パートナーとも呼ばれる、最高位ランクのスポンサーです。
ワールドワイドオリンピックパートナーは、IOCと契約します。
東京2020オリンピックのTOPパートナーは、14社です。有名なところで言えば「コカ・コーラ」「パナソニック」「VISA」「TOYOTA」などです。
ワールドワイドオリンピックパートナーは、世界中でオリンピックのロゴ・名称を使った宣伝活動する権利を与えられます。他には、アスリートの肖像使用権・選手記者会見時のロゴ露出・独占記事広告の提供などがあります。
費用は非公表ですが、報道によりますと、年間換算(契約は複数年のため)で200億円から250億円といわれています。
ゴールドパートナー
こちらは「Tier1」と呼ばれるスポンサーです。
ゴールドパートナーは、東京オリンピック組織委員会と契約します。
東京2020オリンピックのゴールドパートナーは、15社です。有名なところで言えば「ENEOS」「キャノン」「NTT」「日本生命」などです。
ゴールドパートナーは、日本国内限定でオリンピックのロゴ・名称を使った宣伝活動ができます。他には、JOCシンボルアスリートの肖像使用権・JOC主催の選手団記者会見時のロゴ露出などがあります。
こちらの年間契約料は約25億円といわれています。
オフィシャルパートナー
こちらは「Tier2」と呼ばれるスポンサーです。
オフィシャルパートナーは、東京オリンピック組織委員会と契約します。
東京2020オリンピックのオフィシャルパートナーは、32社です。有名なところで言えば「味の素」「JTB」「セコム」「日本郵便」などです。
オフィシャルパートナーに与えられる権利は、日本国内での東京オリンピックスポンサー活動です。
こちらの年間契約料は約20億円といわれています。
オリンピックの放映権
オリンピックに関係する、IOCの収益の8割は放映権料がしめています。
NBC(アメリカの放送局)はアメリカ国内のオリンピック独占放映権契約をIOCと結びました。
その契約は、2014年のソチ冬季五輪から、2032年の夏季五輪までで、総額120憶ドル(約1兆3000億円)でした。
日本では、近年の世界的スポーツイベント(主にサッカーW杯とオリンピック)の放映権料の高騰をうけ、日本放送協会(NHK)と民放各社が、共同で「ジャパンコンソーシアム(1996年)」を立ち上げて、放映権料を払い、各社に振り分けて放映しています。
ジャパンコンソーシアム
日本が、IOCに払う放映権料です。
- 1996年 アトランタ・オリンピック 104億5000万円
- 1998年 長野オリンピック 39億円
- 2000年 シドニー・オリンピック 142億7000万円
- 2002年 ソルトレイクシティ・オリンピック 49億4000万円
- 2004年 アテネ・オリンピック 170億5000万円
- 2006年 トリノ・オリンピック 45億3000万円
- 2008年 北京オリンピック 198億円
- 2010年 バンクーバー・オリンピック
- 2012年 ロンドン・オリンピック 2大会計 325億円
- 2014年 ソチ・オリンピック
- 2016年 リオデジャネイロ・オリンピック 2大会計 360億円
- 2018年 平昌オリンピック
- 2020年 東京オリンピック 2大会計 660億円
- 2022年 北京オリンピック
- 2024年 パリ・オリンピック 2大会計 440億円
- 2026年 ミラノ・コルティナダンペッツォ・オリンピック
- 2028年 ロサンゼルス・オリンピック 2大会計 475億円
ちなみにですが、ジャパンコンソーシアムは、サッカーW杯ではFIFAとの契約で
2014年ブラジル大会 400億円
2018年ロシア大会 600億円
を支払っています。
アメリカ(NBC)と、日本(ジャパンコンソーシアム)だけでこの金額ですから、IOCってすごいですね(2016年のリオデジャネイロ大会時は、放映権による収入が3000億円を超えたそうです)。
本当にNPO(非営利団体)なのかと、疑ってしまいます。
IOC(国際オリンピック委員会)の不祥事
2002年ソルトレークシティー・オリンピック招致裏金問題
1999年に、IOC委員が、6人追放された出来事です。
IOC委員のジャンクロード・ガンガ氏は、コンゴ共和国のスポーツ・観光・レジャー大臣でした。ガンガ氏は、ソルトレイク招致委などがすすめた、土地転売で多額の利益を得るなど、7万ドル近い現金、その他の贈り物1万4000ドル、家族などの旅費も11万ドル近く受け取り、総額にして25万ドル近く受け取っていたということでした。
IOC委員でスーダン共和国のゼイン・ガディル氏は、娘の口座にカネを振り込ませていました。ガディル氏には、娘などいないにもかかわらず、6回に渡って1000ドルを、娘の口座に振り込ませていたということです。
チケット不正転売問題
2016年8月17日、IOC理事のパトリック・ヒッキー氏が、リオデジャネイロ・オリンピック観戦チケットの不正販売事件に関与した疑いで、逮捕されました。
ブラジル警察は、額面より高額でオリンピック観戦チケットを転売する仕組みに理事が関わっていたとしています。転売による不正利益は1000万レアル(約3億円)に上る可能性があるということでした。
警察によりますと、捜査員が17日朝に、ヒッキー理事のホテルの部屋を訪れると、妻が応対した。理事のIOC関連の書類を持っていた夫人は捜査員に、夫は週末にアイルランドへ帰国したとウソの説明したという。
そこで捜査員は「ホテルにはもう1室、息子名義で借りている部屋があるのに気付き、そこへ行くと、ヒッキー容疑者がひとりでいるのを発見した」ということでした。
逮捕後には、病院に運ばれました。体調不良で、理事としての職務は休職することになったそうです。
国際陸上競技連盟(IAAF)前会長ラミン・ディアク(セネガル)
2020年東京五輪招致のコンサルタント契約で、2013年7月と10月に、東京五輪の招致委員会がシンガポールのコンサルタント「ブラック・タイディングズ」社に約2億3000万円を送金したことが問題となりました。
それはそのお金が、2020年東京五輪招致の集票のための「賄賂」ではないかと、疑惑が浮上しているためです。
このコンサルタント会社は、シンガポールに所在していますが、IOC委員で国際陸上競技連盟(IAAF)前会長でもあった、セネガル人のラミン・ディアク氏の息子、パパマッサタ・ディアク氏の「ダミー会社」とみられているということです。
IOC委員には、IAAFの息がかかったメンバー(陸上関係者)が多いのと、アフリカ人は「アフリカ大陸」からは立候補都市はありませんが、票はもっているためです(IOC委員の約15%)。
ある国のIOC委員は「10万ドルで投票してほしいと、立候補都市から持ち掛けられた」と証言しています。また、五輪招致のコンサルタントをしている人物も「1票10万ドルで、票を集めたことがある」と話しています。
2018年に韓国で開催された平昌五輪の招致活動でも、韓国企業がディアク親子に集票を依頼したという疑惑が報じられました。
リオデジャネイロ五輪の招致でも、息子のパパマッサタ氏に「賄賂」を渡したとして、ブラジルのオリンピック委員会の会長が、2017年に逮捕されました。
ということで、今回の記事はここまでです。ここまで読んでもらい、本当に、ありがとうございました。