韓国大法院(最高裁)判決とパク政権

2018年10月30日に、韓国大法院(韓国の最高裁)は、差し戻し審で新日本製鉄(現日本製鉄)に対して、韓国人4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じる判決をくだしました。

この問題は2012年5月に、韓国大法院が日韓併合時の、日本企業による徴用者への賠償請求を初めて認めたことで、大きくなってきました。
しかし、それ以前(2009年8月)には、ソウル行政裁判所で、大韓民国外交通商部が裁判所に提出した書面を通じて「日本に動員された被害者(未払い賃金)供託金は、請求権協定を通じ、日本から無償で受け取った3億ドルに含まれているとみるべきで、日本政府に請求権を行使するのは難しい」という見解を明らかにしています。

さらに、2012年の韓国大法院の判決に対しては、2015年に当時のパク・クネ大統領が「強制徴用事件と関連して早く『政府意見』を大法院に送って、この問題が終結するようにしろ」という指示を出していたことが明らかになっています。
ここで言うところの「政府意見」とは、徴用工問題にたいしての韓国政府の立場のことで、「1965年の日韓請求権協定により解決済み」というものでした。
つまり、2012年の判決は、この韓国政府の立場とは逆の「日本企業は賠償を支払え」という内容のものでしたので「韓国政府の立場とは違う」という事を、大法院に伝えるよう指示したということです。

しかも、「大恥にならないように」とか、「世界の中の韓国という位置と国の品格が損傷されないように賢く処理しなさい」という言葉があったことを、元側近が証言しています。

パク・クネ元大統領といえば、就任当初の演説で、「(日本と韓国の)加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わることはない」と語り、世界各国で日本の悪口を言いまくる「告げ口外交」を展開した人物です(妹が親日のため、一部では親日とも言われています)。
まあ親日でも反日でも、協定や合意を守ってもらえるなら、どちらでも良いのですが、反日と言われていりパク・クネですら、「日本企業に賠償を求めることは恥」という認識だったということです。

このように、日本企業へ賠償を求める大法院判決がでたのは、パク・クネ政権時ですが、同政権は「恥ずべき判決」と認識していたため、なんとかしようとあがいていたようですが、そうした状況は、「超反日大統領ムン・ジェイン」の誕生で一変することになります。

ムン・ジェイン大統領は、今でこそ「韓国政府は大法院の判決に関与することはできない」との立場を示していますが、2018年には「(元徴用工らの)個人請求権は消滅していないという観点から解決していくべきだ」と述べています。

ムン・ジェイン大統領は、就任当初から明確な「超反日」を示していた人物で、2国間の国際合意である「慰安婦問題日韓合意」も平気で破棄しました。
また、ムン政権時の検察は、徴用工訴訟を遅らせた疑いで、大法院前幹部を逮捕しています。

元徴用工への誤解

私の理解不足かもしれませんが、普段メディアで「元徴用工」について聞いていますと、まるで、日韓併合時(主に太平洋戦争時)に、日本で肉体労働をして働いてた朝鮮人を指しているのかとも思える報じ方も見られましたので、今一度、はっきりさせておきたいと思います。

朝鮮半島から日本に渡ってきた、いわゆる「戦時労働動員」には、大きく分けて3つの形態がありました。

まず一つめが、1939年から1941年にかけて、日本企業の募集担当者が朝鮮半島へ行き、現地の人間(朝鮮人)を面接して採用し、日本で肉体労働をおこなっていた「募集工」と呼ばれている形態です。

そして二つめが、1942年から1944年9月まで実施されていた「官斡旋」という形態です。
これは朝鮮総督府(韓国併合によって大日本帝国領となった朝鮮を統治していた機関)が、各市・郡などに動員数を割り当て、行政の責任で募集をして、民間企業に割り振ったもので、職場や職種について納得がいかなければ、断る自由がありました。

最後に三つめが「徴用工」と呼ばれる形態です。これは1944年の9月から、1945年の3月までの、7か月間に渡ってとられていた形態で、まさに強制的に労働へ従事させていました。
これは戦争が長引くにつれて日本の男性の多くが徴兵されたため、国内産業を支える人手不足が顕著になっていったことでおこなわれました。

4人の「元徴用工」?

2018年10月30日に、韓国大法院(韓国の最高裁)が、現日本製鉄に対して韓国人4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じましたが、この4人はいずれも募集に応じた労働者です。

4人のうちの2人は、1943年9月に平壌で、現日本製鉄の工員募集広告を見て応募し、面接に合格後、募集担当者に引率されて渡日し、大阪製鐵所の訓練工をしていた者たちです。
もう一人は1941年、テジョン市長の推薦で勤労奉仕の「報国隊」に入り、日本製鐵の募集に応じ、担当者に引率されて渡日し、釜石製鐵所の工員として働いていた者です。
そして最後の一人は、クンサン府(現在のクンサン市)の指示で募集に応じ、日本製鐵募集担当者の引率で渡日、八幡製鐵所工員をしていた者です。

もちろん日本政府としては、「元募集工」「元官斡旋」「元徴用工」への賠償も含めて、1965年の日韓請求権協定により解決済みですが、韓国大法院が勝訴判決を下した「元徴用工」たちは、半強制的に労働へ従事させられていた「元徴用工」ですらないということです。

反日発言を繰り返す韓国大統領

2020年の新年に開かれた記者会見で、ムン・ジェイン大統領は、「日本も解決策を示し、韓国と力を合わせるべきだ」と述べました。

このように、一国の最高裁が判決を下し、大統領までが苦言を述べてきますと、「日韓請求権協定」に不備があったのかと不安になってきますが、当時の日本政府は、しっかり日韓間の議事録を交わしています。
その議事録では、請求権に含まれるもの、つまり、すべて解決済みとされるものは何かについて、8項目にわたる説明があり、そこに戦時徴用労働者の未払い賃金と補償も含まれてますので、安倍総理が、判決直後に「国際法に照らしてありえない判断だ」と述べたのも当然です。

現在この問題は、新たなステージに突入していき、2020年8月7日、韓国大法院が日本製鉄に賠償を命じた「元徴用工訴訟」をめぐり、日本製鉄が裁判所の資産差し押さえ命令に対して即時抗告(不服申し立て期間を短く限定した抗告)をおこないました。

これは原告側が、日本製鉄が韓国で設立した合弁会社の株式のうち、日本製鉄所有株の一部を差し押さえており、地裁の差し押さえ決定に絡む書類が同社に届いたとみなす「公示送達」の効力が8月4日に発生していたことへの対応で、この即時抗告によって、裁判所の判断が出るまで差し押さえの効力は確定しなくなります。

しかし、韓国の裁判所は、日本政府が「深刻な状態を招く」と警告する「現金化」への手続きも同時に進める見通しで、識者によりますと、今年中にも現金化がおこなわれるということです。

識者のなかには、ムン・ジェイン大統領の任期は2022年の5月までですので、その後の政権とうまく付き合っていけば良いというような意見もありますが、そんなことが本当に可能なのか(現実的なのか)と不安になります。

ここ最近の政権で反日ではなかった大統領なんていません。少しましだったのがイ・ミョンバク元大統領になるのでしょうが、少し支持率が低下しだすと反日政策や反日発言を繰り出していましたので、次期大統領もおそらくは、反日なのは当たり前で、その度合いが緩いか強烈なのかということになると思われます。

こうして書くと、反日の大統領を否定しているように感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
基本的に、教育や日々の情報などで、自国民が友好的と感じていない国家に対し、強い姿勢で挑むのは支持率を気にする民主国家では当たり前の行動です。
仮に日本でも、(政府はないとしていますが)尖閣問題を抱えている中国にたいして、弱腰な対応をしていると支持率は下がるはずです。

一部の過激なコメンテーターなどは、「断交やむなし」とか言いますが、安全保障問題や経済関係などもありますし、日本では多くの在日朝鮮人が生活していますので、気持ちはわからなくもありませんが、現実的ではないでしょう。

前の記事でも書きましたが、世界では隣国と仲が良い方が珍しいのですから、日本も相手国を友好国とはみなさず(反日で支持率が回復するということは、相手国は日本を友好的に感じていないということですので)、条約・協定・合意に基づいて粛々と付き合う関係を目指すことが、お互い腹も立てずに済みますのでいいのではないでしょか。

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