この記事の目次
大統領選挙の仕組み
アメリカの大統領選挙というのは、四年に一回おこなわれる、アメリカ最大のイベントです。この大統領選挙は、約一年かけておこなわれます。
途中経過ですら、世界中のトップニュースで扱われ、結果は世界中に大きな影響を及ぼします。
普通に生活していて、イギリスの首相の名を知らない人はいても、アメリカ大統領の名前を知らない人は、いないのではないでしょうか?
投票するには選挙権が必要です!
アメリカでは、日本のように成人したら、勝手に投票用紙が送られてくるなんてことはありません。投票するには選挙権が必要となります。
選挙権を得るには、 アメリカ国籍をもっていて、18歳以上であり、選挙人名簿に申告し、登録されていることが条件となります。
※必ずアメリカ国籍が必要で、永住権では与えられません。選挙権がないのに選挙人登録をすると、刑法で罰せられます。
まずは、予備選挙です。
このワードも、よく見聞きすると思います。
これは各政党から立候補する、候補者を選ぶ選挙です。詳しいやり方については、各政党ごとや各州によって異なりますので、はぶかせてもらいます。
予備選挙をかんたんに説明しますと「選挙権をもっている有権者が、自分が大統領になってほしい人物を支持している、代議員に投票します。」という間接選挙の形式です。
こうして、より多くの代議員の票を獲得した候補者が勝利となります。
こういったことを、各州で順番におこない、各政党の大統領選挙立候補者を決めます。
予備選挙の途中で、勝ち目がないと判断した候補者は、自ら撤退していきます。これは大統領の予備選挙には巨額の出費が必要となるからです。
夏には、共和党・民主党がそれぞれ党大会を開き、各政党の代表立候補者の立場を確実とした者が、自分が指名した副大統領候補とともに、大統領候補として指名され、演説をおこない党の一致団結を訴えかけます。
ちなみに立候補するには、アメリカ生まれ(両親がアメリカ人の場合は、アメリカ以外で生まれててもOK)のアメリカ人であり、35歳以上で、14年以上アメリカに住んでいることが条件として、合衆国憲法で定められています。
大統領本選挙で大統領をきめます。
まずは、一般投票です。
各政党の予備選挙を勝ち抜いた大統領候補者は、投票日にむけて約2か月間の選挙戦を繰り広げます。
投票日は決まっていて「4年に1回、11月の第1月曜日の翌日の火曜日(11月2日から8日の火曜日)」におこなわれます。
選挙人制度とは?
投票のやり方は間接選挙となっていて、有権者は、各州の選挙人に投票します。
選挙人は、どちらの候補を支持するかを表明していますので、有権者はどちらかの党のグループに投票します。こうして大統領は、一応間接的に投票されます。
変わっているのは「勝利者独占方式」というシステムを採用していることです。勝利者独占方式というのは、ある州で勝利すると、その州の選挙人の人数すべてを獲得できるというものです。
そのシステムのせいで「総得票数で勝利しながらも、選挙人獲得数で敗れ、大統領になれない」といったことがたびたびおこります。
ではなぜ、直接的に大統領候補者に投票せず、間接的に選挙人に投票するといったシステムをとっているのか?
アメリカでの選挙人の制度は、1787年9月17日発行の合衆国憲法制定のときに、定められました。当時は、テレビやラジオはもちろん、インターネットも無かった時代です。
そして識字率も低かったので、各大統領候補者の主張を知る手段がありませんでしたし、アメリカ全土は広大ですが、交通網も通信網も未発達でしたから、物理的に直接選挙をおこなうのは難しかったのです。
そのため、いずれかの候補者の支持を表明している、地元の信頼できる名士や知識人に投票するといったシステムを採用しました。
現代にはそぐわないシステムかもしれませんが、駐日アメリカ大使館が運営する「アメリカンセンターJAPAN」では、選挙人制度が維持されている理由を以下のように述べています。
- 選挙人制度は憲法に規定されており、憲法の修正は難しい
- 選挙人制度は2大政党制を強化するために、2大政党(共和党と民主党)のどちらも変更を支持する見込みがない
- 選挙人制度の結果、大統領候補は小さな(人口の少ない)州でも選挙運動を行う必要があり、多くの米国民はこの状況を支持している
- また、その結果、大統領候補は全米各地の有権者の関心事を知り、それに対処する必要がある
選挙人投票
12月の第2水曜日の次の月曜日(12月13日から19日の月曜日)に、各州の選挙人団が集まって、集会を開き「選挙人投票」が実施されます。
これは一般投票の結果をうけて、おこなわれるものですから、昔ならいざ知らず、現代では形式上の側面が強いのですが、たまに造反が起こります。
選挙人が支持表明をくつがえして、違う候補者に投票することは、連邦法上は自由となっています。しかし、各州の州法では罰則があったり、無効とされたりします。
大統領就任へ
先ほどの選挙人投票の開票は、翌年の1月におこなわれ、1月20日に「アメリカ合衆国大統領就任式」をおこない、新たな大統領が誕生します。
大統領選挙プチ情報
2大政党以外の立候補者はいないのか?
多くの州では2大政党以外の立候補者には、有権者による一定数以上の署名を必要とされます。そのため、一部の州では立候補できても、全州での立候補となると、時間も手間もかかるといったように、立候補へのハードルが高く設定されています。
一般投票数で勝利してたのに、選挙人の獲得人数で敗れたケースって?
有権者の投票数が直接反映される制度になってませんので、たびたび起こってます。
- 2016年
有権者の票を一番集めたのは、ヒラリー・クリントンでしたが、大統領に就任できたのは、ドナルド・トランプでした。 - 2000年
有権者の票を一番集めたのは、アル・ゴアでしたが、大統領に就任できたのは、ジョージ・W・ブッシュでした。 - その他にも、1824年・1876年・1888年にもこの現象は起こっています。
選挙人のわりあては?
全米に選挙人は538人いて、各州ごとの人口に合わせて、わりあてられています。
その昔、奴隷制度があった時代は、奴隷には選挙権がなかったので、奴隷の多い南部では選挙戦で不利になるといった理由から、ジェームズ・マディソン(アメリカ合衆国憲法の父)は「奴隷1人は4分の3人として、人口に計上し、選挙人の分配に反映させる」といった、奴隷の人口のみを利用し選挙権は与えない、といった、荒技を繰り出しています。
以上で今回の「アメリカ合衆国大統領選挙」の記事はおしまいです。
ここまで読んでくれた、あなた!本当にありがとうございました。