感染拡大を防いでも支持率低下は防げない!

世界の先進国とされるアメリカや、欧州のイギリスやフランス、ドイツなどでも猛威を振るい、多数の死者を出す感染拡大を招いた国家と比較して、日本が死者数が少ないことからも、現在のところ「新型コロナウイルス」への対応は間違ってなかったと言えるはずです。

日本は他国と比べ、憲法や法律の違いなどがあることから、警察や軍隊が街や県境を警備して、国内での移動の制限や外出禁止などを、強制することは出来ませんし、帰国者や感染が疑われる人の隔離も強制は出来ませんでした。
さらに、プライバシー保護の観点からも、携帯の位置情報を使用したデータ公開などは、もちろんおこなわれず、あくまでも「要請」にとどめるしかない状況での対応となっていました。

しかし、こうした状況下で完璧ではないにしろ、被害者数的には、十分に合格点を与えられてもいいといえる結果をだしているはずの安倍政権の支持率は、下降線を辿り続けていますし、一部メディアからは、アジア諸国のなかでは成功と言えないなどの批判も上がっています。

確かにメディアというのは、ペンを武器に政権与党や権力への監視役を担っていますので、ある程度は仕方ないのでしょうが、少しミスリードするような報道が目立つのではないでしょうか。

例えば「韓国と比べて日本の致死率が高い」との報道が見られますが、日本では医療崩壊を防ぐことに重点を置いた方針から、PCRの検査数が抑えられているため、実際の国内感染者数はもっと多いと推察されています。
そのため、日本がもしPCR検査の数を増やせば、当然ながら致死率は下がりますし、実際、韓国と比較した人口10万人当たりの死者数では、ほぼ変わりません。

もう一つよくある報道が、アジアの途上国と比べて、人口10万人当たりの死亡者数が多いというものですが、そもそも、検査や検死の実施数が不明な国と比較しても、正確な数字はわからないはずですし、日本政府が渡航や入国への強権を伴った制限を実施すれば、それはそれで越権行為だと批判するはずです。

黒川元検事長の定年延長問題

「#検察庁法改正案に抗議します」で一躍有名になったこの騒動が、安倍政権の支持率降下の一因になっていることは間違いないでしょう。

この報道こそ、マスコミがおこなったミスリードの極みといえるかもしれません。

まずは大前提として、現在の「検察庁法」では、検事長を含む検察官の定年は63歳で、検事総長の定年は65歳となっており、現在の検事総長である稲田伸夫氏が2020年7月25日に退官されるといわれています。

今回、廃案となった「国家公務員法改正案」ですが、これが安倍政権に近いと言われる黒川元検事長の定年延長と結び付けられ、報じられていたことが誤解を生み、そこにあまり理解していないであろう芸能人が参入したことで、この誤解は止められない状態となりました。
通常であれば、こういった誤解を生じさせた原因は、マスコミの報道姿勢にあったわけですから、皆の理解を正しい方向に導くことが重要だったのでしょうが、そうはしなかったようです。

誤解①
これは、ご存知の方も多いでしょうが、黒川氏の半年間の定年延長(勤務延長)は、2020年1月31日に閣議決定されていますし、これは当時、カルロス・ゴーン氏の問題やIR汚職問題を抱えていた検察のナンバー2であり、実質的には現場指揮のトップであった黒川氏が(定年延長がなければ2020年2月8日に定年となり)交代するのは影響が大きいというのが内閣の主張です。

この内閣の主張にたいしてマスコミは、黒川氏の定年を、現職の検事総長の退官時期まで伸ばしたのは、黒川氏を次期検事総長にするためだという趣旨の批判をしました。
この批判は理解ができます。実際に黒川氏が安倍政権よりに動いているのかどうかは知りませんが、この閣議決定によって、黒川氏が検事総長に就任できる可能性を得たのは事実です。

誤解②
廃案となった「国家公務員法改正案」での、「検察庁法の改正」は、その一部分でしかありませんし、公務員全員の定年を63歳から、民間企業に合わせた65歳に変更しようというものです。
そして、検察庁は高度な独立性が担保されていることから、「検察庁法」という別の規定で定められていた検察官の定年も、他の公務員と等しく65歳にしようとした法案です。

ここでマスコミは、もうすでに決定している黒川氏の定年延長の閣議決定を、同列に並べて報道したことで、この「検察庁法の改正」が悪法であるかのような誤解を生みだしました。

誤解③
これが一番の誤解を生んでいることですが、廃案となった「国家公務員法改正案」が可決されたところで、法案が施行されるのは、2022年4月1日であり、黒川氏の定年が65歳まで伸びたとしても、2022年の2月8日に定年を迎えますので、今回の法改正の影響は受けません。

つまり、今回の騒動となった改正案の施行前に、黒川氏の定年がきてしまいますので、黒川氏を検事総長にすることに反対するのであれば、1月31日にされた閣議決定に反対しないと意味をなしません。

誤解④
政権が検察の人事権に介入しているというような批判もありましたが、検察庁法第15条は「検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。」というふうに、法務大臣ではなく、内閣がこれらの人事をおこなうことが、すでに法で定まっています。

このように内閣に任命権はありますが、実際には、人事院規則によって細かな要件が組み立てられていますので、当然ですが限られて中での任命権の行使となっています。
そして今回の騒動でマスコミは、内閣による検察への人事介入を批判していましたが、過去には証拠捏造問題なども起こし、起訴した案件は99%が有罪とするような、巨大権力を保持した検察自身が、独自に人事権を行使するほうが危険だという意見もあります。

起訴前に十分な見極めがされているのでしょうが、有罪率が99%以上では、司法との検察の関係性の方が問題でしょうし、今回の賭け麻雀問題でもそうですが、検察の取り調べを受けている者の状況が「ある関係者筋の話」として、リーク情報が報道されていることからも、検察とマスコミの関係性も問題があるのではないでしょうか。

さいごに

「アベノマスク」や「Go To キャンペーン」などで、業者の選考過程や契約内容の問題が取りざたされ、安倍政権は支持率の降下を招いてますが、確かに内容はどうかと思う面もありますが、批判の仕方もどうかと思います。

対策や実効が遅ければ、スピード感をもって実行しろと批判され、急げば業者の選考基準が不明だと批判されるというのは、少しかわいそうだとも思います。

それよりも私が気になったのは「Go To キャンペーン」の委託先に「電通」と「パソナ」の名前があったことです。
この両社はよく問題をおこしていますし、特に人材派遣大手のパソナは、竹中平蔵が会長を務めています。
竹中といえば、小泉政権時代に経済財政政策担当大臣や総務大臣として「非正規雇用」を大量に生み出し、ピンハネビジネスを加速させ、その後会長に就任し「究極の天下り」という批判をうけた人物です。

あれだけ安倍政権批判をするマスコミですが、スポンサーや仕事上つながりのある「電通」や「パソナ」への報じ方はだいぶ甘いように思いますし、黒川元検事長と一緒に賭け麻雀を楽しんでいた社員にたいしても停職1ヶ月などの軽い処分で済ませています。

他の組織が「身内」に甘い裁定をくだしたり、擁護したり、便宜を図ったときには、正義を振りかざして過熱報道をおこなうのに、自社の社員や取引先にたいしては、甘くしていますので、いまいち信用が得られないのではないのでしょうか。
もしも、そういったところにたいしても、厳しい姿勢を見せてくれれば、政権批判も非常に説得力を増していけると思うのですが、きっと「身内に厳しく」というのは、とても難しいことなんでしょうね。

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