日本は、議院内閣制を採用していますが、世界中には、違った政治制度の国家が多数存在しています。
それでは、今回の記事では、世界の政治制度の違いについてみていきましょう。

大統領制

国家元首や、行政権の主体たる大統領を、国民から直接的に選出する政治制度です。

こうして、執政を行う大統領を、立法を担当する議会とは異なる選挙によって選び、国会議員から選出しないことで、行政と立法の分離を実現しています。

アメリカの大統領制

アメリカの大統領は「勝利者独占方式」といわれる、独自の選挙システムによって選出されます
「アメリカ大統領選挙の仕組み」についての記事はコチラをどうぞ。

立法権・行政権・司法権の三権の分立が強いアメリカでは、行政を担当する大統領や各大臣は、議会での議席を持てません。
大統領は、法案を提出する権限をもっていないので「一般教書」や「特別教書」という演説を通して、議会に勧告をしています。
もし、大統領が望まない法案が議決された場合は、大統領は「拒否権」を行使することができますが、それでも議会が3分の2以上の多数で再議決すれば、法案は法律として採用されます。

そして大統領には、議会の招集、解散をする権限はありませんが、アメリカ合衆国憲法では、上下両院ともに3分の2以上の多数が賛成した場合、弾劾によって大統領を罷免することができるように定められています。
しかし、アメリカの歴史上、いまだ弾劾によって大統領が辞任した例はありません。

韓国の大統領制

韓国の大統領の任期は4年で、再選されることはありませんし、国民の直接選挙によって、国会議員と同じように選出されています。

韓国の三権分立は、アメリカとは少し違っていてまして、議院内閣制に近い要素をもっていますので、政府閣僚は国会議員が就任できますし、内閣も法律案を議会に提出することができます。

そして韓国には「国務総理」と呼ばれる役職の、首相も存在し、韓国の法律によって「国務総理は大統領を補佐し、行政に関し大統領の命を受け行政各部を統轄する」と定められています。
このような制度になっているのは、韓国では1987年に民主化するまで、強権的な統治が続けられてきたという歴史があり、民主化後は、大統領の権力濫用を防ぐため、首相にも権限が与えられるようになったためです。

そして韓国の議会は、大統領を弾劾する権限をもっていますので、国会による弾劾決議によって、任期中の大統領を退任させれる権利をもっています。

半大統領制

半大統領制とは、議院内閣制の枠組みを採りながらも、より大きな権限を有する大統領を首長としている政治制度です。

フランスの半大統領制

フランスでは、大統領選挙と議会の選挙を同時期に実施することで、国民の判断は一貫する可能性が高くなり、行政と議会がある程度は連動するようになっています。
そのため、厳格には三権分立とは言いにくい体制となっています。

こうした現代に繋がる大統領制ができたのは、1958年のシャルル・ド・ゴール首相のときです。
ド・ゴール首相は、議院内閣制のシステムを採りながらも、大幅に大統領権限を強化した「第五共和国憲法」を採用し、これ以前は、形式的・儀礼的な権限しか持たなかった大統領に「三権の総覧者」として、議会解散権・閣僚任免権・条約批准権などの大きな権限をもたせました。

大統領と首相が存在していますが「外交・安全保障は大統領の責任」、「内政は首相、内閣の責任」というふうに役割分担がされています。

イタリアの半大統領制

イタリアは、共和国で大統領制ですので、首相と大統領がいて、国家元首は大統領となっています。

イタリアの大統領は、国家元首としての権威はあるのですが、行政や軍事に関する権限は、ことごとく首相のもとにあります。
首相は、大統領によって任命されますが、通常の場合、議会の首班指名をそのまま受け入れるだけですので、首相の事実上の任命権者は議会ということになります。

このため、イタリアの大統領は、日本の天皇やイギリス女王のような「象徴」として、形式的な権限を有しているにすぎないと思われがちです。
しかし、様々な制約はありますが、議会の解散権は、大統領の専権事項ですし、そして特例ではありますが、首相の任命に関しても、大統領大権によって、議会に議席を持たない民間人をこれに起用することが、憲法上は可能となっています。

議員内閣制

議院内閣制は、議会制民主主義の発祥国でもあるイギリスで誕生した政治制度で、議会と政府(内閣)が分立した上で、内閣は議会(特に下院)の信任によって、存立する政治制度です。
日本の制度も、この議員内閣制といなっています。

イギリスの議院内閣制

現在でも行政の最高権限は、枢密院が握っているとされていますが、これは形式的なものであり、実際には議院内閣制に基づいて政治がおこなわれています。

イギリス首相の任命は、総選挙の後や前首相の辞任の際に、国王によっておこなわれます。
これは「首相は庶民院の議員でなくてはならない」、「庶民院の支持をうけて組閣するのに最も適していると思われる人物を選ばなくてはならない」という、厳格な慣習に従っています。
しかし実際には、議会の信任を得られる人物でなければ、首相の任務を遂行できないため、選ばれる人物は、庶民院で絶対多数を占める政党の党首に事実上限定されています。
このためイギリスでは、二大政党制のもと、庶民院(下院)の第一党の党首が、首相に任命されるのが慣行となっています。

閣僚の任免は、首相の指名・申出にもとづいて国王が(形式的に)おこないますが、庶民院か貴族院(上院)のいずれかに議席がなければ、閣僚となることはできません。

ドイツの議院内閣制

ドイツ行政府の長である連邦首相は、連邦議会議員から選出され、内閣を組閣する議院内閣制を採っていて、内閣は連邦政府と呼ばれています。
国家元首である連邦大統領は、基本的に象徴的・儀礼的な権限しか持っていません。

ドイツ連邦議会は、次の連邦首相候補を選出した後にしか、内閣不信任案を提出できないようになっています。
先に、次の連邦首相を決めるとなると、連立政権で首相や副首相などのポストをめぐって、様々な思惑がでてきますので、連邦首相の不信任は困難なことになっています。
このようにドイツでは、短期政権となることを防ぐため「建設的不信任制」という制度を採用しています。

イスラム共和制

イスラム共和制とは、近代から現代にかけて、中東およびアフリカのイスラム圏で採用されている体制です。
この制度では、主権は「神」にあります。

日本を含めて世界のほとんどの国家では、政治と宗教の分離がなされている「政教分離」であるのにたいし、イスラム圏では、政治と宗教が密接な関係をもつ「政教一致」となっています。

君主ではなく、人民によって選ばれた代表が統治をおこなう、共和制という概念を基調としていますが、国法はイスラム教の教えに基づいていますし、シャリーア(イスラーム法)そのものを法として扱うなど、政治とイスラム教は、普通の日本人が考えてるよりも、ずっと深い関係にあります。

一党独裁制

非競合的政党制とも呼ばれる、特定の政党による独裁体制のことです。
政治学では通常、純粋な一党制のほか、事実上の一党独裁である形式的な複数政党制のヘゲモニー政党制も含まれます。

中国の一党独裁制

中国は、マルクス主義や毛沢東思想を理論的基礎とした、共産党が権力をすべて掌握する、社会主義政権の政治制度を採用しています。
中国の憲法では、共産党が社会主義建設をおこなうことが記されていて、共産党は国を「指導」する立場にあります。

中国共産党の、代表約3000人が集う全国人民代表大会(全人代)が立法府です。
全人代が、国家主席・副主席、首相、中央軍事委員会主席、総理、最高人民法院・最高人民検察院の長を選出し、行政府や立法府は、全人代に責任を負います。

このように、三権分立の確立はまったくしておらず、権力が集中する構造になっています。

ベトナムの一党独裁制

ベトナムの政治体制は「社会主義共和制」で、ベトナム共産党による一党独裁制の国家です。

ベトナム共産党の最高職である党中央委員会書記長(最高指導者)、国家元首である国家主席、政府の長である首相、立法府である国会の議長を、国家の「四柱」と呼び、「四柱」を中心とした集団指導体制をとっています。
この「四柱」は、権力の分散をはかるために、同じ人物が兼務することはなかったのですが、最近は、この原則が崩れつつあります。

ベトナム共産党政府の運営は、市場経済化しつつ政治の民主化は認めない、中国共産党独裁下の中華人民共和国に類似しています。

今回の記事は、ここでおしまいです。
もちろん、ここに記した以外にも世界中では、様々な体制の国家が存在してますよ。

それでは、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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