新疆ウイグル問題とは?

中国の「新疆ウイグル自治区」を中心とした「ウイグル人」の独立運動をめぐる問題です。

新疆は、18世紀の中頃に清朝の領土とされ、1884年に省となりました。中華人民共和国は、漢人以外の民族を55の「少数民族」として「民族の区域自治」で統治してします。

ウイグル人は、約1000万人以上いますが、そのうちの980万人以上が、新疆ウイグル自治区に住んでいます。
そして「新疆ウイグル自治区」では、19世紀のムスリムの蜂起、1930年代、1940年代の「東トルキスタン共和国」の樹立など、短期間ではありましたが、何回かの独立経験をもち、中国の辺境の地で、分離独立、高度な自治、あるいは人権を求める暴力事件が多発しています。

ウイグル人とは?

ウイグル人の祖先は、いまのモンゴル国に打ち立てた、遊牧国家にさかのぼるとされています。
8世紀には、諸部族を統一してウイグル国をつくりましたが、天災やその他で崩壊し、バラバラになりました。その後、西へと逃れた集団が、いまの新疆地区に移り住んで定住したのです。

1949年には、新疆地区の人口の4分の3を主要民族であるウイグル人が占め(約330万人)、漢人はわずか30万人でしたが、2011年時点の比率では、新疆全体で漢人が38%、ウイグル人が47%となっています。

ウイグル人収容所の報道

2019年、新疆ウイグル自治区で、イスラム教徒を中心とした少数民族にたいして、中国共産党政府が弾圧を強めているという報道が、欧米メディアを中心になされました。

厳しい取材規制のため、収容所の実態は、はっきりしていませんが、周辺関係者や国際人権団体によれば、100万人から150万人が、収容所に入れられたとなっています。

入手した内部文書からニューヨークタイムズは、この収容所は、中国共産党政府にとって「再教育キャンプ」と位置づけられ、習近平国家主席は、イスラム過激主義について「ウイルス」と同じようなものなので「痛みを伴う積極的な治療」でしか治せないと考えていると報じました。

そして、この問題の内部文書では、新疆ウイグル自治区に帰省した人々に、当局が家族の身柄を拘束していることについて、どう説明するかを指示していました。
拘束されている者は、過激主義の危険性についての「教育」を受けていて「法を犯した訳ではないが、まだ解放できない」と説明しろという内容でした。
また収容者たちは「誤った思想を捨て、中国語と仕事の技能を、無料で学ぶことができるこのチャンスを大切にするべきだ」と説明するようにも指示ていて、さらに、収容者の身柄解放はポイント制で決定され、家族の言動も点数に影響し得ると、警告するよう指導していました。

中国共産党はアメリカの「対テロ戦争」という言葉を都合よく取り入れて、習近平は、中国の当局者たちに対して「アメリカの9・11同時テロへの対応を手本にするように」とうながし、別の政府高官は、イギリスでの最近の複数のテロ事件は、政府が「安全保障よりも人権を優先させた」ことが原因だと主張しています。

内部文書の内容

この文書は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手しました。

2017年に、新疆ウイグル自治区の共産党副書記で、治安当局のトップだった朱海侖氏が、収容施設の責任者らに宛てた連絡文書では、

  • 「絶対に脱走を許すな」
  • 「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
  • 「悔い改めと自白を促せ」
  • 「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
  • 「生徒が本当に変わるよう励ませ」
  • 「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを確実にしろ」

という、通達をだしていました。
そして、他の流出文書では、

  • 「生徒のベッド、整列場所、教室の座席、技術的作業における持ち場は決められているべきで、変更は厳しく禁じる」
  • 「起床、点呼、洗顔、用便、整理整頓、食事、学習、睡眠、ドアの閉め方などに関して、行動基準と規律要件を徹底せよ」
  • 「生徒には悔い改めと自白を促し、彼らの過去の活動が違法で犯罪的で危険な性質のものであることを深く理解させよ」
  • 「浅い理解や悪い態度、反抗心すらうかがえる者には、教育改革を実行し、確実に結果を達成しろ」

というように、収容者の生活が細かく監視、管理されている状況や、人格改造が目的ともとれる指示がされています。
そして、点数システムによる管理の指示もありましたし、外国の市民権をもつウイグル人の逮捕や、外国で暮らすウイグル人の追跡に関する明確な指示も読み取れました。

中国の反応

中国政府は、入所者たちは自発的に「過激思想」の撲滅を目指す施設に入っていると説明しました。

中国の劉暁明駐英大使は、この文書は偽物だとし、中国の施策は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、同自治区では過去3年間、テロ攻撃は1件も起きていないと述べました。
さらに「当該地域は現在、社会的に安定し、民族集団もまとまっている。人々は満足と安全を以前よりずっと強く感じ、生活を楽しんでいる」
「西側には、そうした事実を完全に無視して、新疆について中国を熱心に中傷している人々がいる。彼らは、中国の国内問題に介入し、新疆における中国のテロ対策を妨げ、中国の順調な発展を妨害する口実を作ろうとしている」
と述べています。

アメリカの反応

2019年の9月、ポンペオ長官は「中国が新疆ウイグル自治区で行っている弾圧運動は、テロリズムとは無関係であると言うべきである。これは、中国が自国民のイスラムの信仰や文化を抹消しようとする試みに関係しているのである」と見解を述べ、各国に、ウイグル人に対する中国の抑圧政策をやめさせるよう呼びかけました。

2019年10月、中国当局による新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧に関連し、28の中国政府機関や企業への禁輸措置を発表しました。
これにより今後は、米政府の許可なしに、米企業から商品の購入ができなくなりました。

日本の反応

2019年12月、安倍総理は習近平国家主席と会談をおこない、香港情勢を非常に懸念していると述べるとともに、新疆ウイグル自治区については、国際社会が多大な懸念を抱いていると伝えました。

しかし、この安倍総理の発言は、アメリカの貿易戦争の動向を受けたものとの批判がでました。
そして、新型コロナウイルスの発生で延期となりましたが、2020年4月に習近平国家主席を国賓として迎えることに対しての批判もありました。

ただし、日本メディアの「新疆ウイグル自治区」に関する報道量は、世界のメディアと比較して少ないわけではありません。
ただし、質に関しては踏み込みにくい事情があったりします。

第一に、対外活動の諜報機関などもありませんので、内部文書のリークがされにくいし、真贋の判断も難しい。
第二に、現地取材でインタビューなどをすると、その協力してくれた者や、取りもってくれた者が、事情聴取や拘束される危険性があることを、当然ながら気にします。
第三に、あまり踏み込むと、ビザの発給停止や拘束、国際問題への発展などへの懸念があります。

こうした事情などがあって、日本のメディアは、あまり大々的に取り上げませんし、そもそも、内政干渉だという声もありますので、政府が「懸念」を越えて、大きな批判をするなどないでしょう。

たしかに、これは中国に限った問題ではなく「民族浄化問題」は世界各地で横行していますし、首を突っ込むのは、新たな火種を生みますので、難しい問題ですね。
アメリカも中国との「貿易戦争」がなければ、静観していた可能性が高いでしょう。

このような問題が表に出てくるのは、表立って国家として批判できない事情があり、諜報機関や外交官などのリークが多いのでしょうが、メディアが機能してるということなのかもしれませんね。
紛争地域や独裁国家などに、危険を冒していくジャーナリストに「やめといたらいいのに」とか「あんまり日本に迷惑かけるなよ」とか思っていた私ですが、遮断されている情報を、世界に発信するは重要だと思いますので、ある程度のコストはしかたないのかな・・・。
とか、言ってたら色んな人たちに、怒られそうですけどね。

それでは、今回の記事はここでおわりにします。読んでくれた「あなた」本当にありがとうございました。

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