アメリカ・トランプ大統領が「国家非常事態宣言」を発表

2020年3月13日、ホワイトハウスで会見

2020年の3月13日、アメリカのトランプ大統領が、新型コロナウイルスの感染拡大への取り組みを強化するため、国家非常事態を宣言しました。この後、野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、医療保険に未加入の人も、無料で検査を受けられるようにするなどの包括支援策で、ホワイトハウスと合意したと発表しました。

これにともない、最大500億ドル(約5兆4000億円)の連邦政府予算を、検査や治療の拡充に充てると発表しました。 ちなみに、2020東京オリンピックの費用は3兆円といわれています。

非常事態宣言後に、予定されている対応

  • 医療従事者が、一部の法律の規制や許認可要件を超えて、より柔軟に患者に対応できるようにする
  • 各州の病院に、非常事態行動計画の発動を要請
  • 50万検体分の検査を可能にする。ただし保健当局は、明確な必要のない検査は推奨していない。民間検査機関などが今月中にも、追加で500万検体分の検査キットを提供するようになる見通し
  • 国内各地の大学が休校するなか、すべての学生ローンの利息を当面、帳消しにする
  • 2週間の有給疾病休暇や最大3カ月の有給介護休暇
  • 医療保険未加入の人への無料検査

こういったことがスムーズに(というか強硬というかわかりませんが)できるのが、権限の強い大統領制のメリットなのでしょう。日本は、政権が「非常事態宣言」を出せるかどうかでもめてましたからね。

医療保険未加入の人への無料検査

ご存じのかたも多いと思いますが、アメリカには日本のような「国民皆保険制度」はありません。(オバマ政権がなんとか成立させようとしましたが、共和党を中心に大反対され、骨抜き案に変更されました)

医療技術は進んでいるアメリカですが、治療はちっとも安くはなく、むしろとっても高額です。

  • 一般の初診料:150ドル~300ドル(16,500円~33,000円)
  • 専門医の初診料:200ドル~500ドル(22,000円~55,000円)
  • 入院: 数千ドル(数十万円)/1日当たりの室料

救急車は当然ながら有料で(走行距離により1,000ドルなんてことも)、救急センターでほんの数時間処置を受けただけで数千ドルの請求書が届いたり、普通分娩で出産しただけで数万ドルの請求を受けることも珍しくありません。

そのため、民間の保険会社と契約しますが、これも日本と比べ高額です。
福利厚生がしっかりしている職場にお勤めのかたは、職場の団体保険(保険料の全額または一部を会社が負担)に加入できますので、出費はググっと下がります。
そうでない場合は、カイザー家族財団の統計によれば、一般的な4人家族世帯の医療保険料は、年平均で1万5千ドルを上回ります(2018年)。さらに、これが10年後には、倍以上になると予想されています。

年間1万5千ドルって、1ドル100円だったら、年間150万円で、月々で考えると、ひと月12万5千円です。こんなの高すぎませんか!?

だから一般的なアメリカ人には、保険の未加入者(全国民の約9%)が多いんです(高齢者・障害者・低所得者には公的資金での保険制度があります)。
さらに、保険に加入している人でも、民間保険会社との契約ですので、契約内容はそれぞれ異なります。安く済ませるためや持病があるために、自己負担率が高い契約を結んでいると、ちょっとしたこと(自己判断ですが)では病院なんていけません。
少し前に、日本のニュースでもやってましたが、アメリカ人がインフルエンザでたくさん死んでしまうのは、無保険または自己負担費が高いので、医者に診てもらわないためです。

今回の非常事態宣言は、このへんの問題をそれなりにカバーできているので、良かったのではないでしょうか。

米著名シンクタンク「ブルッキングス研究所」の発表

アメリカ有数ののシンクタンクであるブルッキングス研究所が「COVID-19が世界のマクロ経済に与えるインパクト:7つのシナリオ」なるものを発表しました。

衝撃的なシナリオが

死亡者数

  • 日本:最善のシナリオ13万人、最悪のシナリオ57万人
  • 中国:最善280万人、最悪1260万人
  • アメリカ:最善24万人、最悪106万人
  • 世界合計:最善1518万人、最悪6834万人

GDPの損失

  • 日本:最善1400億ドル、最悪5490億ドル
  • 中国:最善4260億ドル、最悪1.6兆ドル
  • アメリカ:最善4200億ドル、最悪1.8兆ドル

この報告書は、オーストラリア国立大学のウォーウィック・マッキビン教授とローシェン・フェルナンド氏が手がけたました「新型コロナウイルスが世界経済に及ぼす影響を理解し、各国が新型コロナウイルス対策に対し、正しい判断をすることを目的としている」としています。

過去のHIV、SARS、新型インフルエンザなどの影響に加え、経済成長率や各国の情勢などを考慮し、死亡者数などを試算し、感染や死亡によって減少する労働力、製造網が乱れることで上昇するビジネスコスト、家計に及ぼすインパクトや消費の変化などの影響を分析した。
その上で、GDPなど最善から最悪の7つのシナリオを紹介しているらしいです。

この予想が当たるのか、はずれるのかはわかりませんが、東京オリンピックの開催を心配している日本人の認識よりも、世界は重大にとらえて対応しているのは間違いないでしょう。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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