食品の大量廃棄が問題となっている日本からは、想像しにくいかもしれませんが、現在の地球の総人口約77億人のうち、1割以上にあたる約8億人以上の人々が、飢餓に直面しているといわれています。

国連食糧農業機関(FAO)は「世界では、飢餓が原因で1日に約5万人以上が死亡し、そのうちの7割以上が子供である」という調査結果を発表しました。
そしてこれは、FAOをはじめユニセフやWHOなどの努力により、長らく減少傾向にあった世界の飢餓人口が上昇に転じたということを示しています。

ここでよく問題とされるのが、人口増加に生産が追い付いてないわけではなく、世界の穀物生産量は年間26億トン以上もあり、これは世界中の人々が生きていくのに必要な量の約2倍であるにもかかわらず、世界の約1割の人々が、飢餓に苦しむ状況にあるということです。

途上国での原因

自然災害

自然環境は、農作物の生産量に大きく影響を及ぼします。
飢餓に苦しんでいる人々の7割は、アジアやアフリカの発展途上国で、農村部に住み小規模農業で生計を立てている人たちです。
日本でも数年前から酷暑による熱中症などが問題となっていますが、世界でも「気候ショック」と呼ばれる、干ばつ、洪水、サイクロンなどが多発しています。
また、自然災害は、インフラや衛生面にも影響を及ぼします。交通網の崩壊による、孤立などもそうですが、衛生面の悪化は、慢性的な栄養不足で免疫力が弱っている体に、命の危険をもたらします。

極度の貧困

食糧問題は、貧困問題とは切り離せない関係にあります。
無収入や低収入の場合は、自分や家族の食糧を確保するのが困難になり、さらにこれが生産性の低下を招きますので、悪循環に陥ります。

過去の植民地支配の影響

飢餓人口の割合が多い国のなかには、過去に欧米列強国の支配をうけていた場合が多く見受けられます。
植民地支配時代には、支配国の指示する単一作物を生産させられていた歴史があり、こうした作物の大部分は、コーヒー、カカオ、バナナなどの換金作物と呼ばれる、自家消費に向かないものでした。
しかも、こうした作物は、市場経済の影響に大きく左右されてしまいます。

戦争や紛争

中央アフリカでは、長年にわたって戦争や地域紛争がおこなわれていますので、農業をおこなうどころか、虐殺から逃れるために、大量の難民が発生しています。
このように、生活の基盤が築ず、支援がおこなわれない国家体制の不安定な国では、当然ながら飢餓問題が発生します。

独裁政権による政策ミス

現在の北朝鮮や、数十年前の中国やカンボジアでみられたケースです。
充分な機材やノウハウも与えずに、生産性のあがらない環境下で労働をさせ、そうしてとれた作物は政府にもっていかれるという状況です。
独裁国家では、支配者があきらかに間違った政策を実施しても、なかなか間違いを認めませんし、幹部や国民も粛清が怖くて文句は言えません。

先進国がもたらす原因

一部の自然災害、過去の植民地支配、紛争問題も先進国がもたらした影響だともいえますが、それをいいだしたらキリがありませんので、そこはお許しください。

穀物相場の影響

最初の方にも書きましたが、世界の穀物生産量と世界人口の単純比較では、飢餓など起こらず充分にまかなえるはずなのですが、なかなかそう簡単にはいかないのが現実です。
穀物の価格は、生産量や需給バランスや世界情勢の影響をうけた取引相場によっても変動しますし、自給率の低い先進国は、必ず自国分の確保に動きますので、途上国は分が悪くなります。

家畜のエサ

世界中で、食べ物に困らずに生活しているのは、およそ2割弱だと言われています。

カロリーベースで1人当たりの食糧供給量を比較してみますと、日本では必要なカロリーより31%多いのに対して、ソマリアでは16%不足しています。
そして先進国では、穀物の約6割が人々の食用ではなく、家畜のエサとなっています。
この結果、先進国で生活する2割弱の人々が、世界で生産される穀物の5割以上を消費しています。

余剰食品の廃棄

世界では、穀物を含めて、毎年約40億トンの食料が生産されています。
それにもかかわらず、食料が余る国と、食料が不足する国が存在するのは、食品ロスが原因の1つとされています。

先進国では、自国民の食料をまかなうために、大量の食料が生産されていますし、自給できないものについては他国から輸入をします。
こうして、40億トンもある食料のほとんどは、収入があり消費が見込まれる先進国に集まるのですが、この食料の3割以上は、消費者や小売店、流通などの都合により、廃棄されてしまいます。

世界で生産されている40億トンの食料のうち、約13億トンが食品廃棄物となっています。

そして、日本の食品廃棄物は、2016年のデータで年間2842万トンもあり、この廃棄をおこなうコストに約1兆円かかっているそうです。
日本政府の対策としては「食品リサイクル法」や「食品ロス削減推進法」を施行していますが、罰則も非常に緩く、啓蒙活動的な意味合いが強いため、効果を発揮しているとは言い難いものになっています。

解決策は

世界の食糧問題にたいして、日本政府は「国際連合世界食糧計画(WFP)」に資金をを拠出することで、貧困による飢餓への援助をしています。
食品廃棄問題については、政府広報がホームページを作って、啓蒙活動をしています。

しかし、現在のところ、解決案は見いだせていないのが現状のようです。

こうした問題をテレビニュースで扱ったときは、キャスターやコメンテーターが「一人ひとりの意識が大切」だとか「買い過ぎない、作りすぎないことが大切」など、それらしいことを述べていますが、同じ局で大食い番組もやっているぐらいですから、それほどの意識はなさそうです。

それに、食料品だけに限らずに言いますと、テレビやネットのニュースで、○○が不足気味って出ますと、それに人が殺到しますので、さらに品薄が加速してしまうのが現実です。
もしも、食料品が日本国民にいきわたるピッタリの量しか販売されなければ、我先にとパニックになることは必至でしょう。
コンビニなどへお弁当やパンを買いに行って、選べるほどの種類がなければ残念ですし、店員さんに文句を言う人も出てきてしまうでしょう。

ということで、今すぐに解決するのは難しいですが、何年後かの未来は、明るいかもしれません。

コンペティション

数年前、食糧問題改善のアイデアを出し合うコンペがおこなわれました。

インド・ルーキー工科大学

この大学のチームは、食べ残し収集システムを作っています。
これは、人々の普段の食べかすから有機的(オーガニック)なものだけを取り出し、それをプラントに持っていき、嫌気性処理機を使い、食べれる農産物に転換するというアイデアです。

has University

このチームは、クローゼットほどの大きさの農場を作りました。
ここでは、LEDライトを利用し、最低限の肥料で、全自動で回るようなシステムとなっていて、すでにビジネスとして展開しています。

ケニアのチーム

このチームは、シンプルにサブサハラなどの乾燥地帯に海水を送り、それを脱塩し、周辺の土地を開拓する、というもので、堀の中には脱塩された水で魚を飼い、このシステムから破壊された森林を取り戻し、砂漠化も止めるというものでした。

ということで、この問題の解決は未来に期待しましょう。この問題解決が多大な利益になるのであれば、きっとどこかの企業や、新しい起業家が出てくるはずです。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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